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夏休みがはじまったある日、姉妹のあかりとゆきは、おばあちゃんの家へ向かいました。電車にゆられ、バスにのって、たどりついたのは静かな田舎の村です。
おばあちゃんの家は、大きな庭をもっていました。そして、その庭のうしろには、そびえたつ裏山がありました。初日の夕方、あかりとゆきは、裏山をさんぽすることにしました。
道を進んでいくと、ふたりは、ものすごく大きなクスノキを見つけました。その木は、三人の大人が手をつないでも囲みきれないほど、太くて大きかったのです。樹皮は深い緑色で、こけが気持ちよさそうにびっしり生えていました。
あかりが木に近づくと、ふわりと白い光が、クスノキの根元からうまれました。その光は、やさしく形をかえながら、ゆっくりと浮かびあがってきたのです。
「こんにちは」と、やさしい声がしました。光は、ゆっくりと女の子のすがたになりました。長い髪は、新緑色で、瞳はきらきらと輝いていました。

「私は、このクスノキに住む、森の精です。ずっと昔から、この木を守ってきました。君たちは、誰ですか?」
ゆきは、怖くてあかりの後ろに隠れてしまいました。でも、森の精の笑顔を見ていると、怖さは消えてしまいました。
「僕たちは、おばあちゃんのうちに遊びに来た、あかりとゆきです」と、あかりが言いました。
森の精は、とても喜びました。毎日、このクスノキのそばで、野鳥の歌を聴いたり、雲の形を眺めたりしているのだと話してくれました。
それからというもの、ふたりは毎日、森の精に会いに行きました。森の精は、ふたりに、野の花の名前を教えてくれたり、蝶々の飛び方が、どうしてこんなにきれいなのかを説明してくれたりしました。

ある日、ゆきが、森の精に聞きました。「どうして、君は、このクスノキの中に住んでるんですか?」
「この木が好きだからです。この木は、長い長い時間をかけて、そだってきました。僕は、この木を守り、この木と一緒に過ごすことが、とても幸せなのです」
夏休みが終わる日、ふたりは、またおばあちゃんの家を去らないといけなくなりました。森の精に別れを告げに、最後に裏山へ向かいました。
「また、夏休みに来てね」と、森の精は言いました。
「絶対に来る!」と、ふたりは約束しました。
自分たちの心の中に、森の精との思い出があれば、どこにいても、森の精と一緒にいるような気がするのだと、ふたりは気づきました。そして、帰りの電車の中で、ふたりは、また来年の夏を、心待ちにしたのです。
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